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横浜コミュニティデザイン・ラボ スタッフブログ

横浜市中区に拠点を置くNPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボのスタッフによるブログです。

ラボいきもの部:File.01中村亮介_「みんな排除されない働きかた」なんて言葉は飾りじゃない

ラボいきもの部

横浜のビルの谷間で、いろんなことやものが、

うごうごと生きもののようにうごめく、ふしぎな団体、

横浜コミュニティデザイン・ラボ。

 

「そこに住まう人たちってどんな人?」という疑問にお答えする、

人間交差点の記録兼、ジャポニカ学習帳的コラムをはじめます。

 

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職場では、オフィス会員さんが金魚を育てています。

金魚が水を浄化して、その水を吸い上げて野菜が育ちます。

小さな生態系が息づいています。

 ラボのいきもの手帳、1ページ目はこの方。

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去年の冬からインターンとして、横浜コミュニティデザイン・ラボに参加し、

今年4月からは職員として、一緒に働いてくれる、りょーちゃんです。

 

横浜市に根づいて、社会にGOODな流れを作ろうとする、プラットフォーム

LOCAL GOOD YOKOHAMAにて、ソーシャルグッドなニュース配信などを

担当しています。

 

また、私の向かいの席で作業していることも多く、

身近な存在として、日々の癒しを提供してもらっています。

 

いろいろと斜め45度上の反応を返してくれる、

どきどきわくわくな、りょーちゃんですが、初めて会ったときから

ここまで話してくれてたかというと、そういうわけではありませんでした。

 

「仕事ができない」ってどういうこと?

 彼と仕事をし始めた時、

ラボは前事務局長&新規事業担当エースのお姉さん、

さらには請求/記帳/支払の実務を担当していた経理のパートさんが抜ける

という普通に考えて、「現場、回していけるの?」な状態でした。

 

そんな、「どっきり!事務局フルーツバスケット!」みたいな衝撃的状況です。

それに対峙するのは、横浜来て3日目の笹川と、

横浜歴23年だけど事務局運営初体験、

しかも「前株後株の違いの大切さが分かる」などの

「オトナの世界」にあんまり染まってない、

りょーちゃんの2人というなかなかな状況です。

 

今は私がまるっと請け負っている経理業務についても、

当初は二人で分業しようと言っていました。

 

その実務の中で、私の「このくらい分かるでしょ」という盲信と

彼の「いや、分からないです」という本音がかみあわないことが出てきました。

 

例えば、こんな感じですね。

 

笹川:「うわ…!今日振込日なの忘れてた…!他にやらなきゃいけない

ことあるから、りょーちゃん銀行行ってきてくれる?」

 

りょーちゃん:「えっと…。どこになにを持っていけばいいんですか?」

 

笹川:「(今忙しいのに…)横浜銀行の通帳と代表印もって銀行!」

 

りょーちゃん:「あの…。代表印って…?丸いのと

四角いのがあるんですけど…?」

 

笹川:「(え?分からないの?)代表印は丸!資格は団体印!」

 

 私の「これは常識だろう」と思って言葉にしていなかった決まりごとと、

りょーちゃんの「あ、いや…。わからないです…」という迷いが

行き違い、作業も滞ることが増えてきました。

 

そんなちょっとぴりぴりした空気で仕事する日が続く夕方、

「経理とか、分からないんですけどぉ、できることないですか?」

と気を遣ってくれた、りょーちゃんに私は言ってしまいました。

 

「わからない、じゃなくてさ、わかろうとしてほしいんだよね」

 

言ってしまったあとに、「これ、言っちゃだめだ」と

思ったのですが、もう時は遅いわけで。

しんどいなかでも、やさしさを見せてくれたりょーちゃんの

気持を、私は無下にしてしまいました。

 

「ライオンは子どもを谷に突き落とす」な指導は効果的?

「言わなきゃよかったな。でも、

『仕事をする』上では、厳しく言わないといけないこともあるよなぁ」

 

と次の日もうだうだと悩んで出勤したところ、

職場の本棚に、たくさんの付箋が貼られていました。

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よく見ると、分類に分けられています。

 

これをやってくれたのが、りょーちゃんでした。

本棚は壁一面に広がるもので、蔵書も数百冊に及びます。

 

献本などで、日々整理されていない本が増えていく中で、

「これ、もっと活用しなきゃなぁ」という意見は

事務局で出ていましたが動く人がいない。

 

そんな中で、りょーちゃんは一人で大量の本と格闘し、

分類づけをして、配置しなおしていました。

 

りょーちゃん、分かろうとしている。

しかも、その上で行動している。

 

付箋が風に揺れる棚が、私に教えてくれました。

 

「教育するときは、何でも教えてはいけない。

獅子がこどもを谷に落とすように、教えないことで、

自分で学ぶ」ということはよく言われます。

 

でも、なぜ谷に落とすのか。

落とされたあと、這い上がった先に何を得てほしいのか。

それを伝えずに、仕事や課題だけまるっと投げるのは、

上長の「わかってよ!私も大変なんだよ!」という

甘えなんじゃないのか。

 

上長が「アイツはまだ甘い」と思うのって、

仕事を任せた人のがんばりが、

上の人が求めるものと違ったっていうことであって、

「部下」(この言い方不適切なので、かっこに入れますが…。)の

ぐるぐる悩んだしんどさとか、

慣れないなりにやろうとして平均の3倍かかった時間とか、

そういう迷いや労力を、

上長の思う文脈で使ってもらえなかったからというだけで、

「まだできてない」とNGを出す、一方的なものなのではないか。

 

できるようになってほしい仕事があるのであれば、

なぜその仕事が必要で、どうして貴方にできるようになってほしいのか

ちゃんと伝えないとならんのではないのか。

 

そんなことを、 本棚を眺めながらぼんやりと考えました。

そして私は、りょーちゃんに「あれして、これして」と

指示を出すのをいったんやめました。

 

そのかわりに、こう聞くようにしました。

 

「最近おもしろかったこと、教えて?」

まずは、彼が何が好きで、何が嫌なのかちゃんと知ろう。

そうすれば、彼がどんな人とこれまで会ってきて、

何を大事にしているのか、という行動の指針が分かるんじゃないか。

 

その上で、りょーちゃんが納得できる伝え方で、指示を出す。

さらには、彼の1年後を一緒に見すえることができる。

そこから、どこの範囲の仕事を任せる、というか

「ごめん!頼んだ!」ってすることができるか。

という地図を作れるんじゃないか。

 

仕事をお願いするのはそれからだ。

と思いました。

 

そうしたら、「え…。その…。」と口ごもることも多かった彼が、

話す言葉が増えてきました。

 

最近では、「ボク、今ちょっと大きい案件が今週で入ってるんですよ」とか、

「今、ボク相手の戻し待ちで時間あるんで、電話番くらいならいけますよ」とか、

ちゃんと自分の状況を教えてくれて、何をできるか具体的に教えてくれる存在に

なってくれました。ほんとうに助かってます…!

 

正直にいうと、私がやったことは、明日すぐに「部下」が

「結果を出す」方法ではないので、「監督者」の時間と労力を

考えると、敷衍できるものではないな、と思ってます。

(不適切な表現はかっこに入れます)

 

でも、今私が所属している団体は「非営利活動法人」であって、

絶対解の出ていない「まちづくり」に取り組む団体です。

 

答えがない問いに取り組むからこそ、

一緒に働く人の愛するものとか、その人が今まで生きてきた「歴史」というべき「癖」

のようなものとかを織り込んだ上で、

ある意味システマチックな「働き方」に落とし込む人が、

一人はいてもいいんじゃないのかな、と思う今日この頃です。