横浜コミュニティデザイン・ラボ スタッフブログ

横浜市中区に拠点を置くNPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボのスタッフによるブログです。

NPOの事務をHackしてみよう会議。その2:非営利団体の会計をfreeeのNPO法人対応から考えてみる

 全国の非営利団体事務局のみなさま、

総会ラッシュシーズンをいかがお過ごしでしょうか。

鮫肌です。

 

決算、理事会、監事監査、委任状回収リレーと忙しい中ですが、

カレー食べてがんばりましょう。

 

【ラボカレー参式:宮島母さまの特製夏カレー】学びづらさ、生きづらさを抱える人たちが、自分のままでいながら社会とつながれる場所、アンブレラ関内を横浜の都市部に作ろうとクラウドファンディングに挑戦中の、当団体理事でもある宮島さんお手製トマトカレー。自分たちの子育て感を語りながら、これからのアンブレラ関内について考える作戦会議でふるまわれました。トマトにナスにズッキーニと、元気な夏野菜がいっぱいです。野菜の中から顔を出す厚めのベーコンにほくほくします。横浜コミュニティデザイン・ラボのお母さんの愛がつまった味に、参加された方も立場や身分を越えて、一人の母、父、その子どもとして自分らしく、なごやかに語りあいました。

横浜コミュニティデザイン・ラボさん(@yokohama_lab)が投稿した写真 -

 

 地味なように見えて、団体の屋台骨を支える

事務局運営を応援するこの連載。

 

いよいよ実務編に入ります。

最近のNPO会計ニュースから

まずは、ちょっと前にニュースですがNPO事務局/WEB企業界隈で

ちょっと話題になったこちらのニュースから。

 ここ数年、WEB企業の社会活動としてNPOに対する

サービスの無償/割引提供やボランティアコンサルティング

が増えています。

 

上記のニュースもそういった文脈の一つなのですが、

前職は農協の総務人事課所属、

NPO業界2ヶ月目のひよっこ事務局職員はこう思うわけです。

 

 NPO会計と、一般的な企業会計ってどうちがうの?」

 

この疑問をちょっと考えてみましょう。

 

NPOと企業の会計

ちがうところ

そもそもNPO法人って何?という方は、こちらをお読みいただくと

分かりやすいのですが、お金以外の「何か」を

対価にすることも多いのが、非営利団体です。

 

その結果、さまざまな社会的価値をつくる

団体運営ができる一方で、客観的な数字で、

団体のあり方を外部に伝えづらいという課題もありました。

 

この課題を解決するため、

福祉や環境、まちづくりなどといった「みんなのためになる」活動を、

政府が「特定非営利活動」として定めました。

 

そして、その活動を行なう団体を、団体の名前で銀行口座が持てるなど

個人と同じように「何かをしてもいい/しなくてもいい」ことを許す、

すなわち「法人として認める」制度が特定非営利活動促進法

(これから先は、NPO法と呼ぶ)です。

 

 この法の上で認められる団体であるためには毎年、

私たちであれば横浜市に、「1年間何をしてきたか会計的に説明する」書類

を提出しなければなりません。

 

いわゆる「ふつーの会社」でいうところの「決算書」と呼ばれるものですね。

ざっくりいうと、NPO法人も株式会社も下記の2点を説明する書類を出します。

 

1、決算(団体で1年間が終わるとき)時点で、

どれだけ資産(お金に換算できる、団体が所有するもの)があるか

 

2、会期(前の決算時の翌日から、今回の決算日までの期間)で、

どれだけ収益(かせぎ)と費用(かせぐために使った対価)があったか

 

で、NPO法人と株式会社の会計報告のなかで、

もっとも書き方が違うのが、2の内容です。

 

具体的にいうと下記2つの書類ですね。

 

NPO法で提出を求められる書類:活動計算書

株式会社の決算で提出する書類:損益計算書

 

この2つの違いとしてもっとも大きいのが、

本業の利益としてみなされる「もうけ」の範囲です。

 

活動計算書での範囲:

NPO法で特定非営利事業と認められた活動での「もうけ」に、

寄付金や助成金、会員からもらった年会費などをふくめた、

活動全体としての「もうけ」のこと。

 

損益計算書での範囲:

営業活動(会社の内外双方で、商品/サービスを売ること)で得た「もうけ」。

寄付金や助成金は一時的なものとしてみなされることが多いため、

本業の「もうけ」から外される場合が多い。

 

おなじところ

先ほど、NPO会計と一般の企業会計では

「もうけ」の範囲がちがう、といいました。

でも、「会計」の基礎となる部分は、

NPOでも、企業会計でも同じところが多くあります。

 

そもそも会計とは、英語でいうと分かりやすいのですが、

「account」ということです。

 

日本語訳だと「説明すること」

単純な「count」、すなわち「数え上げる」ことから

一つ進化させるわけです。

数えた結果から、他者に伝える情報を導くことが、「account」の

本当の役割です。 

 

段階に分けて話すと、こういうことですね。

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自分たちの団体や会社が何をしてきて、何をしなかったのか。

そして、これから何をしようとするのか。

それを他の人や団体、行政に向けて分かりやすく発信すること。

それが会計です。

 

NPO会計、やってみよう

NPO会計の全体像が見えたところで、

実際にfreee NPO会計キットを使ってみましょう。

 

このキットに入っているのは、この3点です。

 

 

NPO法人用勘定科目・部門セット

NPO会計でいうところの活動計算書にあった形の

「もうけ」を記録できるようにするもの。

 

NPO法人用決算テンプレート

活動計算書などの書類を実際に作れるようにするもの。

 

NPO法人用 freee の使い方ガイド

⇒説明書です。

 

 

これが、NPO法人用勘定科目セットの一部です。f:id:sasayarn:20160612143537p:plain

これを見て、そっと記事を閉じたくなった経理ご担当者は、

ここに問い合わせして、電話サポートを受けてください。

 

freeeのすごくいいところは、銀行口座を自動で読み取ってくれるところと、

困った時に電話でサポートしてくれるところです。

 

会話で問題を解決してくれるので、困った時に解決法を調べようと、

ネットで迷子になることを減らせます。

 

ラボも4月からfreee導入にあたって、

さっそく導入電話サポートを受けてみました。

 

最初に、サポートのお兄さんはこう言いました。

 

「定款と貸借対照表を送ってください。

あとはボクたちで設定します!」

 

おおう。何も入力しなくていいのか…!?

 

でも何で定款と貸借対照表が必要なのでしょうか。

 

そもそも、この2つのむずかしい感じの書類は

なにものなのでしょうか。

 

定款:

団体の行なう活動、団体の形そのものを決める文書。

NPO団体における憲法みたいなもの。

 

貸借対照表

さきほど説明した、会計報告で必要な2つの書類のうち、

1にあたるもの。ある時点で、

資産(自分たちの団体が所有する、もうけの元となるお金など)と

負債(他の団体/個人が所有する、お金など)を記録した書類。

⇒毎年、特定非営利活動団体が提出しなければならない書類の一つです。 

 

 定款を見れば、どういった活動でその団体が

収益を作っているのかが分かります。

だから、会計的に「わける」ことが、

その団体に合った形でできるようになります。

 

そして、貸借対照表を見れば、freeeを使いはじめた時点で、

団体がどれだけの収益の源を持っているのか、

またそれは自分たちのものなのか、他の団体/人のものなのか

が分かります。

すると、会計の「つたえる」段階の中で、

「これまで私たちはどうしてきたのか」を明確にすることができます。

 

そして、「まとめる」の部分を自動で処理してくれるのが、freeeの役割です。

 

なので、この2つの書類をfreeeに共有することによって、

会計の流れをめぐらせていくための基礎ができる、ということですね。

 

基礎ができたところで、今度は実際に日々の活動のなかで、

運用していく方法をお伝えしてきますね。

テーマは、「パソコン苦手でも、簿記資格なくても、

楽して、ちゃんとaccountしていくこと」です。

 

余談

電話サポートで、設定までまるっとやってくれるfreeeですが、

カスタマイズぐりぐりできるところも個人的に気に入ってます。

 

といいますか当団体は、2016年度で13周年と老舗のため、

事業がかなり多いのが特徴です。

 

だから、憲法的に全体をお伝えする定款からのみ事業を分けると、

ちょっとざっくりすぎるわけで。

 

なので、事業を一つ一つに分けて端的に報告する事業報告書

(これまた特定非営利団体が提出しないとならない書類です)

を見ながら、細かく部門分けしてみました。

 

こんな感じ。

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前に書いたように、定款は憲法です。

つまり、団体のあるべき姿を描いたものではありますが、

その時々のリアルな実態を完全に記述したものではありません。

(あまりにある時点での団体についてくわしく書いてしまうと、

今度は「定款が団体の動きを制約する」という

逆転現象が起きてしまうので、微妙なのです)

 

団体のこれまでの姿、そしてこれからのなりたい形を表す会計だからこそ、

定款のみならず、事業報告書などを深く見ながら、しくみを作れるサポートが

できるところがあるといいなと妄想しています。

 

自分も勉強します。勉強した内容はここでまたお伝えしていきますので、

何卒であります。